やってしまったとあの日の夜のことを思い出しては、自分のあまりのカッコ悪さに何度も落ち込んだ。結局あの後、ソファで一晩を明かした俺は決まり悪さから朝食を共にしないかというの気遣いを丁重に断って逃げるように家を後にした。
あれから数日が経つ。自宅に帰り着いてから押し寄せる後悔と自己嫌悪の海に沈みながら、帰り着いた旨と泊めてくれたことの御礼と謝罪のラインを送ったきりとは連絡を取っていない。
「もーまっつん暗いよー!」
「過ぎたことウダウダ言っても仕方ねえぞ」
週末の今日、どこから話を聞きつけたのか、との進捗を聞かせろとせっつかれ、気乗りしないながらもかつての部活仲間たちと行きつけの居酒屋に集まっていた。浮かない顔の俺に及川と岩泉が言葉をかけるが、沈んだままの気持ちは浮上しない。
「そんなへこむことないと思うけどな」
静かに様子を見守るだけだった花巻がようやく口を開いたかと思えば、発せられた言葉に及川と岩泉が首を傾げる。
「ってしっかりしたやつがちょっと抜けてたりするのツボらしいから」
「ギャップ萌えってこと?」
「そんな感じ」
松川は普段隙がなさすぎるくらいだからちょうどいいんでないの。取り成す花巻に、しかし俺の気持ちは晴れない。
例え彼女の好みがそうであったとしても、好きな人の前ではカッコよくありたいと思うのは男の性ではないだろうか。やりきれない気持ちが燻るのに任せて酒を煽る。程々にしておけよと、差し向けられた心配の声は聞き流して、アルコールに溺れていった。
酔っ払うと無性に声が聴きたくなるのは、アルコールが理性を溶かしてしまうからだろうか。みなと別れ、帰路を一人で歩く俺の頭の中はのことでいっぱいだった。溢れ出した欲望のまま、彼女の番号を呼び出しボタンをタップする。
耳に押し当てた受話器からコール音が響く。夜も更けた時分だ。もう寝てしまっているかもしれないと不安が頭を過ぎるが、電話を切ろうと言う気にはなれなかった。心配をよそに程なくして、コール音が止み「…もしもし、松川?」と彼女の声が聞こえてきた。
「遅くにごめん、寝てた?」
「ううん、起きてたよ。どうしたの?」
「うん…」
問われたもののいざ電話がつながってみると、声が聴きたかったと素直に口にするのが気恥ずかしくて口ごもってしまう。
「…松川、いま外にいる?」
「うん、飲んで帰ってるところ」
「そっか、気を付けて帰ってね」
「ありがとう」
声を聞いていると、顔が見たい、会いたいという気持ちがむくむくと膨らんでいく。どうにも抑えられない本音がぽろりと口をついたのは酒のせいだ。あんなにも後悔したというのに、どうやら俺はまた失敗を繰り返そうとしているらしかった。
180627