6月の花嫁になりたい、といつかの夜に語った私の夢を、彼は覚えていてくれたらしい。結婚式の日取りを決める時に、真っ先に提案してくれた。日本では梅雨の時期で天候を考えると、6月の挙式は条件が厳しい。天候に影響されない会場や日取り選びなど、彼は奮闘してくれた。そのおかげか、カーテンを開いて窓から覗いた空はここ数日の空模様が嘘のように晴れ渡っている。天も祝福してくれてるんだよ、なんて彼は得意げに笑った。

控え室に入ってきた彼の姿を見て、ほう、と息を漏らせば、気づいた彼が呆れたように笑う。肌が白く、髪の色素も薄い彼がオフホワイトのタキシードを纏うと、まさにこの世のものとは思えないほどの美しさだった。似合うだろうな、と想像はしていたものの、実際に目の当たりにすると見惚れてしまう。

「これまで、たくさん支えてくれてありがとう」

挙式へ向かう前のひととき。今日はスケジュールがぎっしり詰まっているから、この後はもう夜までゆっくり話せる時間はないだろう。立ち上がるために手を差し伸べてくれた彼の手をぎゅっと握り、お礼を告げる。

「これで終わりみたいな言い方やめてよ。これからも俺はお前のこと支えるし、ずっとそばにいるんだから」
「うん」

いつだってやさしい彼の言葉が今日も私を甘やかす。じわりと、瞳に滲んだ涙に気づいた彼が笑って眦に触れる。

「泣くの早すぎるだろ」
「だって、」

それ以上は言葉にならなかった。ずっと好きだった彼と一緒になることが、夢なんじゃないかと思うくらい実感がなくて、この現実がまだ信じられない。

「せっかくの日なんだから笑ってよ」
「…うん」

ぱちぱちと瞬きをして、涙の滴を払う。口角を上げて笑みを象れば、やっぱりは笑ってるのが一番かわいい、と満足げに頷いた彼に手を引かれ歩き出す。
どんな時でも私のことを気にかけてくれる彼の、愚痴や悩みを誰が聞いてくれるのだろう。この人が甘えられる人はいるんだろうか。まだ彼が友人であった頃に湧いたふとした疑問。それが自分であったらいいのにと思ったあの日からずっと、彼の一番になりたいと願ってきた。
これからは、私が彼の幸いになろう。6月を守る女神に祈りを捧げ、交わした誓いの口づけに願いを込めた。



HappyBirthday Koshi Sugawara!!
190613執筆
190708掲載