彼女は三度の飯よりも眠ることが好きだ。休みの日は放っておくと夕方ごろまで寝ていることがあるし、昼食後はたいてい眠そうで昼寝や夕寝をすることも多い。
週末のルーティンであるランニングを終えて帰宅しシャワーを浴びた後、寝室をのぞけば案の定彼女の体はベッドの上にあった。体内時計がしっかり仕事をして、平日の起床時刻には必ず目を覚ます彼女は、そこから二度寝を決める。今は時間的にちょうど二度寝の眠りが浅くなるタイミングだと思うがどうだろうか。彼女の髪を梳くように撫でながら寝顔を見つめていれば、まぶたが震え緩慢な動きで目が開く。

「起きたか。おはよう」
「…おはよ…つきしまさんはやおきだね…」

寝起きの掠れた声でぽやぽやと口を動かす彼女はまだまだ眠そうだ。ここで無理に起こすと機嫌が悪くなるので背を優しく叩いてやりながら頬に鼻頭に額に、と唇を振らせてやれば、くすぐったがりながら微睡の淵をいったりきたりしている。

「朝飯用意してるぞ」
「あさごはんなに…?」
「ホットサンド。ソーセージとチーズ挟んだやつ」
「おいしそう…」

少し前にガス火で使うホットサンドメーカーを買ってから、朝食はホットサンドを作ることが続いている。ハムやソーセージにチーズを合わせるオーソドックスなものから、しらすと青紫蘇、アボガドとサーモンなどいろんな具材を挟んでは、おいしい美味しいと毎週大喜びで食している。楽しみができたからか、近頃の朝は以前までに比べるとサッと起きるようになった。それでもグズグスしていたい気持ちもあるようで、こうしてたわむれながらゴロゴロとする時間は変わらず続いていた。

「ほら、そろそろ起きるぞ」
「うん…ちゅーしてくれたらおきる」

もうほとんど起きているくせに、俺が機嫌を損ねないように甘やかしているのをよくわかっている彼女は、ここぞとつけこんで甘えてくる。しかたがないとため息をついて見せて、唇を塞げばふにゃりと眦が緩む。いつもならサッと離れるのをあえてしばらくそのままでいたら、息ができないのであろう彼女がふごふごいいながらバンバンと肩を叩いてくるから笑いながら解放してやった。もう!と憤慨しながらベッドを抜け出た彼女の後を追って寝室を後にする。
ホットサンドメーカーは、パンをセットしてコンロの上にスタンバイ済みだ。5分ほどで焼き上がるからそれまでに身支度を整えてやってくるだろう。さて、今日はどう過ごそうか。朝飯を食いながら相談するか、とつまみを捻ってガスに点火した。



201004 / twitterより再掲