喉が痛い、股関節を始め節々が痛む、体がだるい。風邪の諸症状のようだが違う。昨晩、恋人に抱き潰された後遺症だ。
恋人の月島さんは良識的な人だから、仕事のことを考慮して平日に体を求めてくることはあまりない。どうしてもたまらなくなったのか迫られることがあっても、無理な抱き方はせず、翌日に響かないようほどほどにしてくれる。
でも、たまにタガが外れたように止まらない時があって、昨日はそのタイミングだったらしい。朝方まで散々に抱かれたせいで、寝不足な上に疲労困憊だ。昨日が週の中日で、今日と明日を乗り切れば土日が待っていることがせめてもの救いだ。

「いっ…た!」

思わず小さく悲鳴を上げ、手に持ち上げた段ボールを一旦床に下ろし、はあ、とため息をつく。普段はデスクワークばかりなのに、今日に限って資料整理を言い付けられるなんてついていない。

「だから休めと言ったのに」

自分しかいないはずの部屋に響いた声に、入り口に目を向ければ月島さんがいた。こちらへやってきた彼は不要物をまとめた段ボールをひょいとなんなく持ち上げる。さっさと歩き出した背中を追いかけ、電気を消してから部屋を出た。

「病気でもないのに休めないですよ」
「でも動くのつらいんだろ」
「誰のせいだと思ってるんですか」
「…すまん」

悪いとは思っているらしい。しおらしい様子にいじわるをしたくなって口を開く。

「さすがに身が持たないので、しばらくおあずけですかねえ」
「それはいいが…お前覚悟しておけよ」
「何がですか?」
「自制はできるが、溜め込んだ分発散する時がすごいぞ」

それはつまり、平日我慢した分土日にしわ寄せがくるということか。
別に月島さんとえっちするのが嫌なわけじゃない。月島さんに抱かれるのはとても気持ちいいし、求められるのは愛されていると実感できて幸せだ。ただ、回数と内容が問題なのだ。月島さんは性欲が旺盛な方で、回数が多い上に一回が長い。月島さんが欲を吐き出すまでに、私は何度もイかされることもあって、体力が追い付かないのだ。いつも最後の方はへとへとで、意識が曖昧になるくらいぐずぐずにされる。でも、土日ならまあいいか、と思ってしまうあたり私は月島さんに甘い。

「…動けなくなったら、お世話してくれるんですよね」
「俺のせいだからな。面倒は見る」
「じゃあ…いいですよ」
「言ったな」

言質は取ったぞ、と向けられる好戦的な瞳の奥には、昨晩散々見せつけられた情欲の色があってずくりと体が疼いた。



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