料理を作るのは割と好きな方だ。お惣菜やインスタント食品、コンビニ飯があまり好きではないこともあって、仕事の日でも晩ごはんはきちんと作っていた。でもたまに、無性にジャンクフードが食べたくなる時がある。週末くらい手抜きをしたいという気持ちもあって、今日の晩ごはんはファーストフードにすることに決め、珍しく残業せずに定時上がりした月島さんとハンバーガーショップに来ていた。

「どれにするんだ?」
「月見バーガー一択です!月島さんは?」
「俺もそれにするかな」
「飲み物何にします?」

週末の店内は混み合っていて、列に並んで待ちながらメニューを眺める。何を注文するか相談しているだけで、なんだかわくわくしてくる。普段なら食べきれないので頼まないが、月島さんはよく食べるし、セットの他に単品でナゲットをつけようか、なんて思案していたら順番が来た。
持ち帰りで、月見バーガーのセットを2つ。飲み物はオレンジジュースとコーラ、どっちも氷抜きで、あと単品でナゲットと、パイを1つ。

「そんなに食えるのか?」
「月島さんも食べるでしょ?それに甘いものは別腹なので!」

私の言葉に月島さんは呆れたような顔をしているが、構わず、以上で!と高らかに告げて注文を終える。注文を取ってくれていた店員が、私たちのやり取りをくすくすと笑っていて、ちょっと恥ずかしくなる。注文してないけど、スマイルをいただいてしまった。

「わーいい匂い!早く食べたい」

支払いを済ませて、待つこと数分。できあがった商品が入ったビニール袋を店員から受け取る。熱気から出る水分でポテトがふやけてしまわないように紙袋の口を開けば、立ち込めてくる油の匂いが空腹の胃を刺激する。涎を垂らさんばかりの私の様子を月島さんが笑う。
貸せ、と言ってビニール袋が奪われ、ついでにとばかりに空いた手を攫われる。掴まれた手をもぞりと動かして、指を絡めて繋ぎ直せば、ギュッと握り返してくれた。

「なんで持ち帰りにしたんだ?」

店内飲食にすれば出来立てが食べれるだろう、という月島さんの指摘はもっともだ。ポテトは揚げたてがカリッとしていて美味しい。ちょっとしなびたやつも私は好きだけど。

「子どもの頃、たまに父親が仕事帰りにテイクアウトして帰ってきてくれたんですよね」

お家で食べるハンバーガーはなんだか特別感があって、とてもわくわくしたのを覚えている。

「月島さんとお家でハンバーガー食べたら楽しいだろうなって思ったんです。だから、持ち帰り」

子どもっぽい理由に気恥ずかしさが込み上げてきて、誤魔化すようにはにかんで見せれば、ぐんと腕を引かれ月島さんの歩調がすこし速くなる。

「冷めないうちに早く帰るぞ」
「うん!」

月島さんの頭越しに見上げた空にはまん丸な月が浮かんでいて、ベランダで月を見ながら食べるのもいいかもしれないなんて思った。きっと月島さんは渋るだろうけど、家に着いたら提案してみようと目論みながら家路を辿った。



190913 / twitterより再掲